小学校の英語教育【後編】問題点や課題はある?親は英語を話せなくてもいいの?

子育て

2020年度から小学校で英語が必修科目となりました。

前回は小学校の英語教育について、目標や授業内容を学年ごとにまとめましたが、今回はその中で指摘されいてる問題点や今後の課題、そして家庭での学習方法について書いていきます。

小学校で英語を習っているのは知ってるけど、自分は英語がさっぱりだという親御さんにもぜひ読んで欲しいと思います。

実は英会話スクールのインストラクターでもある管理人が良いと思う親子で学ぶ方法もご紹介しました。

子供の能力を引き出し、伸ばしていくために、ぜひ参考になさってください。

やっぱりあるよね…小学校の英語教育に関する問題点

ご存じの方も多いと思いますが、小学校での英語教育は新しい取り組みですから、やはり問題点や課題は色々あります。

仕方のない部分ではありますが、親がそれを知っているのは大事なことだと思います。

以下、2023年現在で指摘されている問題点と今後の課題をご説明します。

問題点

  1. 教員の資質:
    英語を教えるための十分なスキルや知識を持った教員が不足しています。
    特に地方ではこの傾向が顕著で、教員自身が英語をあまり得意としていない場合もあります。
    これに関しては小学校の先生たちの苦労を察して余りあるという感じです。
    勤務するに当たってそれまで必要じゃなかった英語というスキルを急に身につけろと言われたわけですから、それはもう大変だと思います。
    だって「やったことがある人」が居ないんですよ、小学校での英語の指導を。
    研修は先生方皆さん受けたのだろうと思いますが、敢えて悪い言葉で表現するなら付け焼刃ですから、「資質を上げろ」と言われても苦しいばかりでしょう。
  2. 教材の適切性:
    使われている教材が子供たちのレベルに適したものであるか、また楽しく学べる内容であるかが問題となることがあります。
    教材の選定やクラス内でのアクティビティをどうするか等、教員の裁量に任されている部分も多くあります。
    くり返しになりますが、やったことのない英語の指導で適切な教材、教具、活動内容を選定するのは難しいはずです。
    結果、小学校での英語教育は「英語に関する興味や関心を育む」「コミュニケーション能力の土台を作る」ということが目指されているにも関わらず、「聞く・話す」の能力を伸ばすための授業になっていないという場合があります。
    親世代の中学校の英語の授業でよくあった「読む・書く」に重点を置いた、話せるようにはならない授業になってしまうのです。
    これで「相手の文化を理解しつつコミュニケーションを取る」という目標が達成できるわけもありません。
  3. 評価方法:
    英語能力を評価するための明確で効果的な基準や手段が不足しているという問題もあります。
    5,6年生では英語も「国語」「算数」「理科」「社会」と同等の科目ですから、一定の評価に基づいて成績を付けなければなりません。
    しかし例によって前例が基本的にないため「小学校における英語の評価基準」というものが日本には存在しないわけです。
    指導者の資質や教材の適切さという点で既に不足がある状況で、正しい評価も何も…というのが私個人の印象です。

以上の点は、新しいことを始める上でどうしても発生する状況であり、仕方のないことと言えるかもしれません。

これらを全部解決してから実施しようと思ったら何十年かかるか分かりませんから、今は「小学校の英語教育」というプロジェクトが始まったばかりのスタートダッシュ時期だと思うことにするしかないと思います。

期待される解決策

  1. 教員の研修:
    まずは教員が十分な英語力と教授法を持つことが重要です。
    そのため、教員の英語力向上と教授法に関する研修を強化することが求められます。
    国や地方自治体がこれをサポートする必要があります。
    これまた教員の方々には負担を強いることになりますが、子供たちのためを思うならこうするしかないでしょう。
    先生方にはぜひ意欲的に取り組んでもらいたいと切に願います。
    ちなみに、この手の問題を根本的に減らすためには小学校でも教科ごとに担当教員を分けるべきだと思います。
    学校によってはそのようになっている所もありそうですが、地方などではまだまだ担任の教員がそのクラスを全面的に見るというスタイルが一般的ですよね。
  2. 適切な教材の選択と開発:
    子どもたちが興味を持って取り組めるような教材の選択や開発が重要です。
    それには、子供たちの興味やレベルに合った、実生活で役立つ内容を取り入れた教材が必要です。
    今後、小学校での英語の授業が長期的に実施されていく中で、より良い教材や教授法が確立されていくことを願います。
    現時点で4年目になりますから、今後5年、10年と続いていく中で日本の小学校に合った英語教材が増えていくと信じたいです。
  3. 評価基準の明確化:
    英語の評価基準を明確にし、それに基づいた適切な評価手段を開発することが必要です。
    評価は子供たちの学びを支え、進行状況を確認するための重要な手段であり、それにより適切な教育プログラムの提供が可能になります。
    これは教材の開発と共に進めなければならない課題です。
    学校や地域によってばらばらの評価基準では何のための指標なのか分かりませんから、今後少しずつでも、できれば早急に評価基準が整っていくことを望みたいところです。

これらの解決策は大きな課題を伴いますが、子供たちが英語を効果的に学ぶためには重要なステップとなります。

また、それらを達成するためには、教育者、政策立案者、地域社会、そして保護者が連携し、持続的なサポートを提供することが重要になるでしょう。

親は英語を話せなくてもいい?家庭学習の必要性

結論から言うと、子供が実際に英語を話せるようになるためには、家庭での学習は必須です。

一部の天才キッズについては分かりませんが、現在の小学校で行われている英語の授業を受けただけで、英語が話せるようなる子供は基本的に居ないはずです。

このように断言するには色々理由がありますが、一番根本的なのが「学校の授業だけでは学習時間が足りない」ということ。

もちろん小学校は英語だけを学ぶための場ではありませんから、1つの教科にかける時間数が限られるのは仕方のないことです。

かなりざっくりとした目安ではありますが、母語でない言語を流暢に話せるようになるのに必要な学習時間は、2200時間以上とも3000時間以上とも言われます。

ただし、これは全ての能力(読み書き、会話、リスニング)をカバーするための時間であり、また「流暢」の定義にもよります。

しかし長期的かつ習慣的な学習が必要だという事実を確認するためには十分な情報ですよね。

一方、日本の小学校での英語の授業時間は、学年によりますが、概ね週に1-2時間程度で、1学期あたり約30-40時間、1年間で約90-120時間程度です。

1,2年生で英語の活動があるかどうかは学校によりますが、6年間の小学校教育全体で見れば、総合で約500-700時間程度の英語教育を受けることになります。

2200時間と比べれば、明らかに不足しているのが分かると思います。

このことから、小学校の英語教育だけでは、流暢な英語力を身につけるのは難しいと言えます。

そういうわけなので、もし子供が英語に興味があって、もっと話せるようになりたいと望むのであれば、親はその環境を整えてあげる必要があります。

どうやって作ればいい?家庭での英語環境

もちろん、小学校卒業の時点で流暢に英語を使いこなせるようになっている必要はないかもしれません。

興味がないのに無理に英語を押し付けるのも、かえって英語が嫌いになってしまう可能性があるので無理強いはやめましょう。

しかし、子供本人が「英語を話したい」という意欲を持っているなら、学校に任せるのは悪手です。

中学校、高校と英語の授業を受け続けたところで、話せるようにならないのはあなたもよくお分かりではないでしょうか。

仮に家庭で英語に触れる時間が毎日あったとすると、学校の授業と合わせて、小学校6年間の間に2200時間を超えることも可能です。

それなのに、親が英語を話せないからというだけの理由で、家庭での英語環境を放棄するのは、せっかくの子供の可能性をみすみす失わせることと同義です。

ここでは、親が英語を話せなくても英語の環境を作る方法をご紹介します。

前提

まず前提として、親が英語を話せないなら、「親自身も一緒に学ぶ」という姿勢を持ってください。

単純に、「相手自身はやってもいないことを自分はやるように言われる」って嫌じゃないですか。

他の教科は親も小学校で学んだ経験がありますが、英語はそうではないはずです。

だから逆に、「親自身が英語を話せないこと」自体は大した問題ではないと思います。

中学、高校の英語の授業は一般的に「英語を話せるようになるためのもの」ではないので、その後も英語を学び続けた経験がないなら話せなくて当たり前なのです。

当たり前のことを「話せない~」と悩んでも意味のないこと。

問題は、自分が話せないからと学校や英語塾に丸投げすることです。

たとえば週1回塾に通ったとしても、先に言った2200時間には到底及びません。

やはり家庭で英語に触れ続けることが何よりも大事なのです。

子供の英語能力を伸ばそうと思ったら、まずは自分も学ぶ姿勢を見せることです。

それによって家庭での英語学習環境が自然と整っていくでしょう。

「教えようとする」のではなく、「一緒に英語やろう!」と子供と対等な立場で一緒に学んでみてください。

子供にとっても、親が同じ目線で一緒に物事に取り組んでいるというのは良い経験になるはずです。

家庭での英語学習のやり方

1. 英語の教材:
英語の絵本を読んだり、英語の音楽を聴いたりすることで、英語のリスニング力を鍛えることができます。
対象年齢が記載された英語教材は色々出ていますから、ぜひ本屋さんで探してみてください。
英語の発音が分からないから絵本を読んであげられない…という場合は、CD付きの本を買いましょう。
文章を指で追いながら、子供と一緒に真似をして発音すればOKです。
「本は読んであげるもの」という概念を忘れて、CDを先生として一緒に学んでくださいね。
このとき、完璧を目指さないというのも大事なことです。
下手でいいから一緒に楽しむ、というのが重要です。
また、自分が読みにくいからとカタカナを振ってしまうのもおすすめしません。
子供は英語の音をそのまま聞き分けることができています。
そもそも英語の音はカタカナでは表せないものなので、子供の学びにとっては邪魔になりますし、逆にカタカナに引っ張られて英語本来の発音ができなくなってしまう可能性が高いです。
「英語を英語のままで聞く」を意識しましょう。

2. メディアとテクノロジーの活用:
英語の子供向けテレビ番組、映画、YouTubeの動画、音楽、オンラインゲーム、アプリなどを活用することで、日常生活の中で自然に英語に触れる機会を増やすことができます。
使いすぎると目が悪くなったりハマり過ぎてしまったりという問題があるので、メディアの利用は時間を決めて行うと良いでしょう。
特に子供は、自分の興味があるキャラクターやお話が出てくるだけで、英語も一気に吸収することがあります。
子供の好きなものを把握した上で、英語に触れる時間を提供してあげてください。

3. 英語を使った実践的な活動:
家庭内で簡単な英語を使ったゲームをしたり、英語でレシピを読んだりするなど、英語を実際の生活の中で使う機会を作ることも効果的です。
英語の表現が実際の状況と結びついたときというのが、その英語を一番覚えやすい瞬間です。
この瞬間が日常の中で多くあればあるほど、英語を覚えていきます。
幼児からできる簡単なゲームなら、親が家具の名前を英語で言って、子供はそれを触りに行く、というような活動があります。
これをやるには親も子供も事前に家具の英語名を知っていなければなりませんが、5つぐらい覚えたところでこういったゲームを取り入れると楽しく暗記を継続できそうですね。

4. 留学やホームステイの経験:
可能であれば、短期間でも英語を使う環境に身を置くことで、英語の実際の使い方を学び、自信をつけることができます。
最近は親子留学というのもありますから、子供と一緒に英語圏に行って、まさに実地で一緒に学ぶという経験を持つことができます。
もちろん単なる旅行ではなく英語を身につけるために行くわけですから、現地で他の日本人とばかり日本語で話していたのでは意味がありません。
目的意識をしっかりと持って、親が自分から英語を使おうとする姿勢を見せましょう。
予算が許せば、夏休み等の休暇を使って実行してみてください。
英語の経験にもなり、思い出もできる、素晴らしい時間になると思いますよ。


これらの方法を用いても、子供たちが新しい言語を学ぶのは時間と努力を必要とします。

言語習得は長期的なプロセスですから、今日やって明日できるようになるものではありません。

細く長く、「続ける」ということが何よりも大切なのです。

そのために大切なのは、親が楽しみながら学べる環境を作り、失敗を恐れずに英語を使ってみることを奨励することです。

下手でもいいし、失敗してもいいから英語を読んでみる、話してみる、ということを親が実践して見せれば良いのです。

何度も言いますが親自身が英語学習に前向きな姿勢を示すことで、子供たちは学ぶ意欲を保つことができます。

ぜひ親子で一緒に、楽しく英語に触れる時間を持ってみてください。

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