日頃どんなに仲の良い夫婦でも、ときには喧嘩をすることもあります。
しかし、元は他人同士だった二人が一緒の家で暮らすのですから、これはある意味当然と言えます。
大事なのは喧嘩をしないことではなく、喧嘩をしてしまったときにその状況をどう解決するかです。
二人ともがその方法を心得ていれば、いつまでも喧嘩の空気を引きずることなく仲直りができますね。
今回は、喧嘩をしてしまったときの仲直りの方法と、無駄な喧嘩を防ぐ方法について解説します。
夫婦喧嘩の解決に応用しよう!コンフリクトマネジメント
コンフリクトマネジメントとは、組織内や個々の人間関係における対立や衝突を適切に理解し、有効に処理するための戦略やプロセスのことを指します。
このプロセスは、コミュニケーションの改善、チームのパフォーマンス向上、クリエイティブな問題解決の促進などを通じて、組織の生産性や効率性を高める重要な役割を果たします。
まずはコンフリクトマネジメントの基本的な考え方と実践方法を解説します。
コンフリクトマネジメントとは
「コンフリクト」とは意見や思想の「不一致」や「対立」という意味です。
これは避けられない現象であり、重要なのは対立が生じたときに適切に対応することです。
この「対立に適切に対応する方法」が「コンフリクトマネジメント」と呼ばれます。
以下に、コンフリクトマネジメントの一般的な手法を挙げてみます。
- 明確なコミュニケーション:
対立が生じた場合、全員が自分の立場や感情を説明する機会を持つことが重要です。
対話を通じて互いの視点を理解し、問題の本質を明らかにすることができます。 - アクティブリスニング:
他人が話している間は理解を示し、必要に応じて質問を行うことで、理解を深めることができます。
これにより、他者の視点を尊重し、共感できる部分を見つけることが可能になります。 - 第三者の介入:
中立的な立場の第三者が介入して、当事者間の対話を助け、解決策を見つけることを助けます。 - 問題点を明確にして解決策を探す:
何が問題だったのか、問題点を具体的に定義します。
その上で可能な解決策をリストアップし、それらを評価し、その中から最善の解決策を選択します。
解決策を実行した後は結果を評価します。 - 交渉:
対立した両者が利益を最大化できるように、共通の利益を見つけることを目指します。
効果的な交渉ができれば、両方の当事者が受け入れ可能な結果に達することができます。
では、これらの戦略を夫婦間にも応用してみましょう。
コンフリクトマネジメントを夫婦間で応用する方法
違う人間である以上、多くの夫婦間で意見や感覚の不一致は避けられないものですが、適切に対処することで関係を強化し、お互いへの理解を深めることができます。
以下に、夫婦間でのコンフリクトマネジメントのための具体的な方法をいくつか提案します。
- オープンで正直なコミュニケーション:
お互いに気持ちや考えを正直に伝えることは非常に重要です。
このときに大事なのは、怒りや非難ではなく、自分の感情や視点を明確に伝えることです。
「あなたがやった」「あなたがこう言った」と相手を主語にしてしまうと、どうしても「相手が悪い」と非難する言い方になってしまいます。
そうではなくて、「私は~だと感じた」「私はこう言われてこう思った」という形で、「私は」で話しましょう。
この「私」を主語にする話し方を『”I”メッセージ』と言いますが、この言い方で「自分の感情」を表現すると、より建設的な対話が可能になります。 - アクティブリスニング:
相手が話しているときには、中断せず、言葉だけでなく感情も含めて理解しようとすることが重要です。
自分の考えに固執して意固地にならず、「相手の言うことにも一理ある」と、心を開いて話を聞きましょう。
相手の言葉を繰り返してみる、質問をする、フィードバックを提供するなどして、完全に同意はできなくても、相手の意見を尊重し、感情を認識することが重要です。 - 冷静さの維持:
感情が高ぶると、有意義なコミュニケーションが困難になります。
自分はなぜ怒っているのか、具体的に何が嫌だったのか、どうしてそう思ったのか、まずは自分自身が冷静に把握して、相手にも冷静にそれを伝えましょう。
そして伝えられた側も感情的にならず、たとえ自分にはそんな意図はなかったとしても、相手にとっては嫌だったんだということを事実として受け入れてください。
深呼吸をしたり、自分や相手が感情的になりそうだと思ったら一時的に話を中断してクールダウンすることで、話し合いをスムーズに進めることができます。 - 問題点を明確にする:
自分たち夫婦にとって何が問題となったのか、問題点を具体的に特定し、解決策を一緒に考え、それを実行するというステップで進みましょう。
このとき、「自分は悪くない」というスタンスでは何も解決しません。
二人ともが客観的に問題を見つめ直し、認めるべき部分は自分の非を認めることも必要です。
そして今後はどうしていくか、具体的かつ現実的な解決策を見つけましょう。
その際、双方が納得できる妥協点を見つけることが重要です。 - 信頼と尊重:
互いに信頼し、尊重し合うことは、夫婦間のコミュニケーションにとって不可欠です。
相手の意見を尊重し、信頼関係を保つ努力をすることが大切です。
解決策を見出したならそれを双方がきちんと実行しましょう。
約束を守ることは相手と交わした言葉を尊重することであり、信頼感に繋がりますが、破ってしまえば信頼感は失われます。 - カウンセリングの利用:
それでも解決しない場合は、中立的な第三者、特にプロのカウンセラーやセラピストに相談するという選択肢もあります。
こういった専門家は通常、問題を解決するための技術と経験を持っていますから、夫婦二人だけでやきもきしているより建設的な解決策が見つかるはずです。
これらの方法を用いて、夫婦間でもコンフリクトマネジメントを行うことができます。
喧嘩をしてしまってもより良い関係を築き、お互いへの深い理解を育むことができるでしょう。
夫婦喧嘩を未然に防ぐ!アサーショントレーニング
コンフリクトマネジメントは喧嘩をしてしまったときの対処法ですが、そもそも喧嘩を予防できればそれに越したことはないですよね。
ここからは夫婦げんかを予防するための方法として、アサーショントレーニングをご紹介します。
アサーショントレーニングとは
「アサーション」とは、「自己表現」や「自己主張」という意味です。
自分自身の意見、感情、権利を尊重し、それを他人に対して適切に伝える能力を養うことを、「アサーショントレーニング」と言います。
自己主張が強すぎると嫌われる原因になりますが、自己主張が上手くできないと本人がストレスを溜める原因になります。
そしてストレスを溜めている夫婦は喧嘩を避けることができなくなります。
アサーショントレーニングを通じて適切な自己主張ができるようになると、ストレスが減りますから、夫婦喧嘩は減るはずです。
それだけでなく、自尊心を高め、一般的な対人関係を改善し、自己のニーズを達成する能力を向上させることができると言われています。
ちなみにこれは家庭でも、職場でも、社交の場でも有用です。
アサーショントレーニングの実践方法
以下、アサーショントレーニングの一般的な実践方法をご紹介します。
- “I” メッセージの使用:
自分の感情やニーズを他人に効果的に伝えるためには、既にご紹介した”I” メッセージを使用します。
「あなたは常に遅刻する」ではなく、「私はあなたが遅刻すると困る」と述べることで、非難ではなく自分の感情を表現するようにしましょう。 - ボディランゲージの理解と使用:
非言語的コミュニケーションもまた、メッセージを伝える重要な要素です。
相手の目を見る、姿勢を保つ、適切なジェスチャーを使用するということを意識して心がけましょう。 - アクティブリスニング:
他人の意見や感情を理解し、尊重するためのスキルも磨きましょう。
相手の話を遮らずによく聞く、質問を返すことで興味と理解を示す、共感を表現すること等が含まれます。
アクティブリスニングについて詳しくはこちら⇒https://fuufuno.com/listening/ - 「ノー」を言う能力(自己強化):
相手の気持ちや意見を尊重することは大切ですが、自分自身のニーズと感情を認識し、それらを尊重することも同じぐらい重要です。
そのために、必要に応じて相手の要求を断ることも必要です。
夫婦であろうと無理な要求をされたときは、上述の”I”メッセージを使用して、「私はこう感じるからそれはできない」と伝えるようにしましょう。
以上のポイントを日頃から意識してコミュニケーションを取ることで、無用の対立を防ぐことができるでしょう。
お互いを尊重しつつ、適切な自己主張ができる関係性を維持できれば、夫婦関係は円満に保たれるはずです。
もう一つの喧嘩予防方法:期待値のすり合わせ
夫婦間における「期待値のすり合わせ」は、夫婦の両方がお互いに期待することを明確にし、理解し合うためのプロセスを指します。
これは夫婦関係における重要なコミュニケーションの一部であり、誤解やすれ違い、そこから生じる喧嘩を防ぐための有効な手段となります。
例えば家事の分担、子育ての方針、お金の管理、休日の過ごし方、性生活、仕事と家庭のバランスなど、自分自身と相手がどんなことを期待しているか把握すれば、もしそこにズレがあってもすぐに話し合って対処することができますね。
まずはお互い余裕があるときに対話の時間を取りましょう。
あまり堅苦しく構えなくも大丈夫ですから、「ねえちょっと~について聞きたいんだけど」と会話を始めてみましょう。
その上で、以下のステップを実践してみてください。
期待値のすり合わせ方法
期待値のすり合わせを行う際の具体的な方法は以下の通りです:
- 自分の期待を明確に伝える:
まずは自分が何を期待しているのかを具体的に説明できるようにしましょう。
そしてそれをパートナーに明確に伝えます。
期待を述べる際には自己主張の形で伝えることが重要です。
はい、つまりここでも”I”メッセージですね。
「あなたが〜〜をすべきだ」というよりは、「私は〜〜を望んでいる」と表現します。 - 相手の期待を聞く:
一方的なコミュニケーションではなく、「あなたはどう思ってる?」とパートナーの期待も聞きましょう。
相手の思いも尊重し、理解するためにしっかり聞きます。
ここではアクティブリスニングの技術を意識しましょう。 - 共通の理解を形成する:
お互いの期待を理解した上で、共通の理解または妥協点を見つけることを目指します。
二人の期待が合致していれば何も問題ありませんし、ズレがある場合は歩み寄って妥協点を見つけましょう。
すべての期待が満たされるわけではないかもしれませんが、互いのニーズを尊重し、お互いに納得できる解決策を見つけることが重要です。
期待値のすり合わせは、理解と尊重の上に築かれるため、喧嘩を予防するだけでなく、このプロセスを通じて夫婦間の信頼と親密さを深めることができます。
ぜひ時間を作って実行してみてください。
いかがだったでしょうか。
夫婦喧嘩はお互いの気持ちを知る上で必ずしも悪いものではないかもしれませんが、喧嘩をしないで分かり合えるなら、その方がいいですよね。
コンフリクトマネジメントやアサーショントレーニング、そして期待値のすり合わせを行うことで、平和で仲良しな夫婦関係を維持していってください。